霧ヶ峰にある「ヒュッテ ジャヴェル」という山小屋の雪下ろしが、毎冬の恒例行事になっているというトシゾーさんからのお誘いで、その山小屋へ初めて行ってきました。

ジャヴェルのご主人であるT橋さんが、5年前に背骨を折る大怪我をされた事がきっかけとなり、それ以来、毎冬、小屋の雪下ろしを手伝うようになったとか・・・。
そのいきさつは、よく知らなかった私ですが、今回トシゾーさんからお願いされた事というのが、「小屋の屋根のペンキ塗り」なのだった。
「人手がいるから来て欲しい」という事で、ボランティア精神にのっとり、二つ返事したのでありましたが。。。

諏訪IC経由で「ビーナスライン」に乗り、霧ヶ峰へ。
霧ヶ峰は、山というよりも「高原リゾートの観光地」というのが、私の個人的な印象。
裾野にはワインディングロードが幾つも走り、バブル絶頂期のスキーブーム時は、車山などのスキー場をよく梯子したものでした。
なので、初めて訪れるジャヴェルも、山小屋というよりは、高原にあるペンション的なイメージを抱いていたのでありました。

そのジャヴェルに、トシゾーさんは、どうしてそこまで惹かれたのか?
その答えも、行ってみなけりゃわからない筈だと・・・


ジャヴェルは、ビーナスラインから少し離れたコナラの森の中にありました。


たたずまいは、至って欧風。
玄関を開けると、初めてお会いするT橋さん老夫婦が、笑顔で迎えてくれました。
60年余り歳月の経った山小屋の中は、余計な照明は落とし、落ち着きのある家具と黒い古民家調の梁が印象的でした。


午後から雨が降り出す予報なので、早速ペンキ塗りの準備。
昨年は、トシゾーさんとリュウの2人で、傾斜のある右屋根にペンキを塗ったという事で、今年は左側の大屋根をやっつける事に。


トシゾーさん、ウメさん&私の3人が大屋根に乗って作業開始。
先ずはワイヤーブラシを使って錆を取り、そこに錆止めを塗る行程までを初日で行いました。


今回初めてお会いしたT山くんは、下屋根のペンキ塗り。
T山くんもガイドのU野さん繋がりでトシゾーさんと知り合い、しかもT山くんの奥さんは、当時トシゾーさんの奥様Qちゃんとも職場繋がりがあったとか・・・
そんなご縁の舞台となったのが、このジャヴェルだという事だ。


「ウメの塗ったところは、なんでこんなに斑なんだ~」とトシゾーさんが吠えつつも、作業はすこぶる順調。
雨予報だった午後も、幸いにして降られることもなく、1日目の仕事は無事終了。

茅野市の湯川温泉「河童の湯」で汗を流してジャヴェルに戻れば、呑兵衛はお楽しみの時間!


夕飯は、トンカツとジャヴェルオリジナルの貴重なワインをご馳走になりました。
仕入れができなくなり、残りはこれ1本だけだとか・・・
その貴重な1本をいただける嬉しさ半面、何だか寂しさもあったり・・・

ワイン通のT橋さんが絶賛していた、トシゾーさん持参のタスマニアワインもまた美味しかった。
T山くんからは、オーストリアワインを買ったつもりが、何故か?オーストラリアのワイン、ウメさんからは蓼科地ビールとスパークワイン、でもって私は黒澤酒造の純米吟醸と・・・


吞兵衛が集えば、これらもあっという間に空き瓶と化し、今宵も呑んだくれてしまいますた。。。

2日目・・・


早朝の霧ヶ峰を少しだけ散策。ススキがそよ風に揺れ、清々しい朝でした。
この日も雨予報に反して、この天気!秋爛漫ですね~


朝食を頂いた後は、早速大屋根に登って昨日の続き。2日目は、錆止めの上に更にペンキの本塗りをします。


青い空に赤い屋根、白いつなぎを着たトシゾーさんのトリコロールカラーがまたいいね。
しかし、屋根の照り返しが暑い事!


予定通り、お昼までには全て塗り終わり、無事作業終了。
たった2日間ですが、60年以上経過した小屋の修繕に携わらさせていただくと、何だか小屋に愛着が沸いてきますね。


お昼は女将さん特性のハヤシライスをご馳走になりました。
暑かったし、腹ペコだったから美味しかった!


ペンキ塗りの勲章?


せっかく霧ヶ峰に来たのだからと、お昼過ぎは、T山くんのガイドで車山湿原まで散策へ!


季節を通して、初めて霧ヶ峰を散策するので、私にとってはこの景色は新鮮。
「ジャヴェルの丘」から見る「八島ヶ原湿原」。今回は歩きませんでしたが、この湿原も花がある時に行ってみたいですね。


霧ヶ峰には緩やかなピークが沢山あって、それぞれ名前があるとの事。


ヤマラッキョウ


リンドウ


アキノキリンソウ


マツムシソウ
数こそ少ないですが、ちらほら秋の花々が咲いていました。


ジャヴェルの丘から蝶々深山(チョウチョウミヤマ)へ、標高は1836m。


蓼科山


蝶々深山を降りていくと、目の前に見えてくるのが「車山湿原」。前方のピークは、気象レーダーのある車山。
ここから見て山の裏側が、スキー場ですね。


車山湿原にある湧き水。
トシゾーさんから、「ジャヴェルの小屋の前にある沢の源頭がこれだよ」と教えてもらいました。


湿原を過ぎて、コナラの森へ。
1時間半の散策でしたが、秋の霧ヶ峰の景色を見ることができて良かった。次は是非、冬に歩いてみたいですね。


ジャヴェルに戻って、コーヒーとバームクーヘンをいただき、T橋夫妻としばし歓談。
ジャヴェルの小屋のことや霧ヶ峰について、いろいろお聞きすることができました。
別れ際、女将さんの鳴らす鐘が何だか名残惜く感じましたが、「次回は冬に、また来ますね~」と約束し、ジャヴェルを後にしました。


帰りは、諏訪湖の湖畔にある国指定重要文化財だという「片倉館」の千人風呂の温泉に浸かり・・・


それでもって、久しぶりにR52沿いにある「南部路」へ。
車を運転するウメさんにはホント申し訳なかったですが、呑兵衛二人はお約束の「生大」を注文し、良い気分になって静岡へ帰りました。

ジャヴェルの小屋が建てられたのは、戦後間もない1950年台でした。
今の「ビーナスライン」がある筈もなく、当時は道を切り開いて、小屋の資材を下から運んだとの事。
霧ヶ峰に建った最初の「山小屋」というのが、「ヒュッテ ジャヴェル」という事でした。
それから間もなくして道路が切り開かれ、スキー場ができて、ホテルやペンションが並び、霧ヶ峰は一変・・・
リゾート開発によって、誰でも車で行ける霧ヶ峰となり、冒頭にも書いた通り、霧ヶ峰は、山というより「高原リゾートの観光地」と印象付けるようになってしまいました。

今回ジャヴェルを訪れて感じたのは、時代の波を受けつつも、昔ながらの「山小屋」としての風格や、その小屋に携わる人との絆は変わっておらず、うまく言えませんが、その歴史を感じさせる雰囲気、そしてもちろん、T橋ご夫妻のお人柄こそがこの山小屋の魅力であり、トシゾーさんが通う理由なのかな~と思ったりしました。

次回は雪下ろし、ガンバリマース!