日付:2016年 8月13日(土)
場所:安倍川支流 関ノ沢~タル沢

関ノ沢大堰堤(8:13)→ゴルジュ7m滝(9:16)→砂防堰堤(10:55)→本タル沢出合(11:40)→タル沢大滝基部(13:41)→1430m稜線(16:13)→十枚山山頂(17:25)→中の段登山口(18:27)


安倍奥、大光山と十枚山を源頭に持つ「関ノ沢」とその支流である「タル沢」へ、リュウと二人で行ってきました。
タル沢は、「山やへの扉」のトシゾーさん夫婦が遡行していて、そのトシゾーさんからリュウが古い遡行図を入手していたが、それ以外に事前情報がある訳ではなかった。
関ノ沢のゴルジュを抜けて、果たして落差50mあるという「タル沢大滝」まで辿り着けるのか?ルーファイが科せられる難易度高い山行だ。
地理院地図の等高線を辿って、遡行する沢筋にラインを付けて予定ルートを定め、最後は稜線まで詰めて、十枚山経由で下山するという作戦を立てた。

十枚山登山口がある「中ノ段」まで車を走らせ、積んできた自転車をデポするも、ここで思いも寄らないアクシデントが・・・!
自転車を置いた塀近くにアシナガバチの巣があったらしく、その大群が私に襲いかかったのだ!
一目散に逃げたのは言うまでもないが、事も有ろうに、頭の"つむじ"あたりを刺されたのだった・・・

「沢に入る前から、これかよ~」


ズキズキ・・・いや、ガツーンとハンマーに叩かれたような衝撃が頭にあったが、予定通り、車で関ノ沢の入渓点へ。
車を降りると、今度はアブがまとわりついて、うるさいうるさい。
リュウが、アブ対策で持ってきてくれた「ハッカ油」を、思わず顔にシュッとやってしまったところが、これがものすごい刺激で目を開けられない始末・・・


頭ズキズキに顔はヒリヒリ・・・いやはや、初っ端からこんな調子で先が思いやられる~
・・・という訳で一難二難あった出だしですが、大堰堤を過ぎたところから、遡行開始。


暫くは、2~3mの小滝を直登もしくは巻きながら、順調に進んで行きます。


淵を泳いだり・・・


へつったりと・・・
水に浸かってクールダウンしたせいか?頭のズキズキがだいぶ治まってきたのは良かったが、またまた私にアクシデントが訪れようとは・・・?


この3m滝の突破で、小指を3cmほどスパッと切ってしまったのだった・・・


10分程止血して、なんとか流血は止まり、テーピングでぐるぐる巻きで事なきを得たが、今日は(も?)なんかもう・・・ツイテない。

蜂には刺されるし指もこんなんだし、私のモチベーションは下がりっぱなし・・・
今日のリードはリュウ・・・君に託した!


両岸が狭まり、いよいよ険悪なゴルジュへ突入。
これから、どんな難所や危険が待ち受けているのか?黒い岩壁に覆われ、その閉塞感が恐怖心をあおります。
そして、その先に見えてきたのが・・・


難関の7m滝、遂に目の前に。
恐らく事前の情報を得ていなかったら、ここで愕然となり、だいぶ後退して高巻きした事だろう。


それにしても、落ち口から陽が差し込んで、なんて幻想的だこと!
この上には、どんな景色が待っているのだろう・・・って上に登れなければ意味がない。
ずっと浸かりっぱなしなので、徐々に体が震え・・・


リュウが取付けそうなホールド&スタンスを見つけ、リードで登り始めた。


流木の丸太が絶妙な位置にあって、いやらしいトラバースのお助けに・・・


滝の上部右にクラックがあるらしくカムを2つ固め打ちし、そのまま滝を直登しようにもホールドが無いとのこと。
右のフェイスにハーケン打ちこみ、更にもう1本打って無事突破~!


フォローの私は、安心&快適!
しかし滝の落ち口には、びっしりと苔が付いていて嫌らしい事!
ここまで連れてきてくれたリュウに感謝、よくぞ行ったよ~さすが!


トシゾーさんが「流木で塞がっている」と言っていた、噂のゴルジュはここ?
これでも、だいぶ流されて綺麗になったのかな~?


ゴルジュの緊張から解放され、こういう景色はなんだか癒されます。


気がつかなければ、通過してしまいそうな「シバシロ沢」の出合。
ここもいつか探索してみたい。


そして、遡行図に書いてあった通り、大きな砂防堰堤がお出まし。
ここは右岸を高巻いて、ルンゼ状のところを懸垂下降し突破。
50mロープだと、沢床までちょっと距離が足りず焦った。


堰堤の上は土砂が堆積しており、流れが落ち着いてしまっておりました。
堰堤が無かったら、昔はゴルジュだったのかもしれません。


昼前に、関ノ沢の支流「タル沢」の出合に無事到着し、ここで一息つくことに。


タル沢は、日当たりのよい明るい渓相なので気持が和み癒されます。
水は澄み切り、魚影も濃い。


自然にできたアトラクション。滑って欲しかったな~。


トイ状の滝を越えると両岸が狭まってきて、滝らしい滝が出てきました。


登りごたえ十分の美しい20m滝。ホールドとスタンスは豊富。


ハーケンをしっかり決めて登っていきました。リードはリュウ。


20m滝の上に出ると、水流は激減しガレ場に。
上部は二俣らしく、どちらへ行こうか迷いそうなところです。


遡行図を確認し「左俣」へ。更にガレを登っていくと、大滝らしき岩壁が見え・・・

「あれが大滝か??」


間違いなく、落差50mはあるであろう「タル沢大滝」、その姿を見ることができました。
そして今回、この滝を登る為に50mロープをチョイスしてきたのでした。
下部はそのままフリーで登り、中間部のテラスでロープを出す事に。


その1ピッチ目は、リュウがリード。
まず滝左から入ってピナクルにプロテクションを取り、滝中央を横切るバンドを伝ってトラバース。
滝の真ん中でシャワーを浴びながらハーケンを打つが、そこからなかなか離れない・・・ハーケンが入らないとの事。
20分くらい格闘して、ようやく打ち込んだのは良いが、今度は「ハーケンが足りな~い」とわめいた??


ハーケンを使い切り(落とした?)、滝を直上できない様子・・・
なので、滝右の草付きにある立ち木でピッチを切ったらどうか?とリュウにアドバイス。

リュウは、立ち木に終了点を構築し、私もフォローで登った。
なるほど~滝は思っていたよりも立っていて、横断バンドのトラバースはなかなかスリルがあった。
でも思っていたよりも岩は安定していて、ガバホールド&スタンスも豊富。


立ち木の終了点に着いて、2ピッチ目は私がリード。
浮石だらけのブッシュを登っていき、何とか大滝の落ち口へ!
最後は直登ではなかったけれど、無事大滝を登ることができ感無量。


大滝の上には滝は無く、沢もすでにチョロ沢・・・源頭部も近し。


そして何故か?そこには古い石垣が・・・??


安倍奥では、よく目にする山葵田の跡でした。
今でこそ、全国そこらじゅうの沢にある山葵田ですが、山葵はここ安倍奥が発祥なんですね。
徳川家康が山葵を絶賛し、安倍奥に山葵田が広がったと言いますが、昔の山葵農家は、こんな山奥に入って働いていた訳ですから、その過酷さが伺えます。


山葵田を過ぎると、水流は遂に消え・・・


獣道を伝って急斜面を更に登っていくと、待望の稜線の兆し・・・


そして無事、一般道に合流し稜線へ・・・リュウと歓喜のハイタッチ!


ガスって何も見えませんが、思惑通り、大光山と十枚山の間にある「黒崩」のコルに出ました。

やれやれと腰を下ろして一息つき、恐る恐る靴下の中を覗いてみると・・・


・・・やられた~
もちろん火あぶりの刑にしたのは、言うまでもなし。
今日は、頭を蜂に刺されて沢では指を負傷し、最後はヒルにやられて〆ますた~。

さて、時刻はすでに16時半前・・・
ゆっくりしている訳にもいかず、十枚山の山頂へと向かわなくては・・・
とうとう雨も降り始めましたが、どうせ体は濡れてるし、一般道だからどうって事は無し。


幹が焼け焦げた落雷跡。




南アルプスの展望の良いところ。


ガスガスは幻想的で美しい風景をかもし出し、これはこれで悪くないな~と思いました。
昨年3月の積雪期、ここを一人ラッセルして歩いた記憶が甦ります。


既に17時を過ぎてしまったが、十枚山の山頂へ。


で、直登ルートを速攻で下って、一目散に中の段まで・・・急げ~


すっかり日が暮れ、ヘッデン下山となりましたが、18時半に無事下山。
いやはや、暗くなる前に戻ってこれて良かった・・・💦


今朝、アシナガバチに刺された現場を速やかに通り抜け、自転車も無事回収。
車を停めた関ノ沢の林道終了点まで自転車を漕いで、今回の山行が終了しました。

いろいろハプニングはありましたが、終わってみれば予定通りのルートを辿り、大滝まで登る事もできたし、充実感ある1日でした。
沢は泥臭いし危険極まりないですが、登攀力に泳ぎ、そしてルーファイと・・・総合力が試されるからこそ楽しいのかもしれません。